
こんにちは。
さかつめ整骨院鍼灸院の坂爪 慶です。
現場の先生から寄せられた実際の相談をもとに、整形外科的な視点と保存療法のアプローチの違いについて深掘りしていくシリーズの第3回をお届けします。
症状のおさらい

今回の症例:70歳 女性
歩き始めの痛みや引きずりがあり、整形外科で「背骨が縮んでいる」と診断されたケースです。
週に1回のブロック注射や低周波治療を続けていたものの、治療をやめると痛みが再発してしまうという経過をたどっていました。
このケースについて、同業の先生方からよくいただく2つの疑問点にお答えする形で紐解いていきます。
① なぜ整形外科はブロック注射を毎週継続していたのか?

「とりあえず注射を打つことで有名な病院」とのことですが、週に1回という高頻度で腰やお尻に打っていたのであれば、それは背骨の間に針を入れる痛みを伴う「神経ブロック注射」ではなく、筋肉の硬結(コリ)を狙った「トリガーポイントブロック」である可能性が非常に高いです。
一般的に、背骨への神経ブロック注射は激痛に対する緊急避難的な処置であり、定期的に毎週打つようなものではありません。
一方でトリガーポイントブロックは、筋肉に対して直接生理食塩水や痛み止めを注入し、筋膜の癒着を剥がして滑りを良くすることで痛みを鎮静化させることを目的としています。
筋肉へのアプローチであるため、週1回など複数回行っても身体へのリスクは少なく、保険点数が安価であっても頻繁に打つ方針をとる医師もいるのです。
また、医師が「背骨が縮んでいる」と指摘した点も重要です。
これは、痛みの原因が股関節そのものだけでなく、腰椎(ヘルニアや脊柱管狭窄症、坐骨神経痛など)からの神経圧迫や関連痛であると医師が疑っていたことを示唆しています。
股関節の痛みを訴える患者様に対して、背骨の変性を疑って腰部へも注射を打つのは、整形外科的なアプローチとしては一つのセオリーと言えます。
② 一般的な「変形性股関節症」の治療方針とは?

整形外科における診断のベースは、レントゲンやMRIといった「目に見える骨や画像」にあります。
そのため、初期の段階では痛み止めやシップの処方、今回のような電気治療や注射での保存療法がメインとなります。
しかし、変形が進行し、関節の可動性が著しく失われている場合(例えば、股関節を90度曲げようとすると外側に逃げて外転・外旋してしまうような深刻な可動域制限がある場合)は、骨性の問題が強いため、保存療法や手技での根本改善は難しくなります。
近年では、人工関節置換術の手術適応のタイミングが早まっており、一昔前は70歳以上が目安とされていましたが、現在では60代でも手術に踏み切るケースが増えています。
手術によって確実に関節の痛みが取れ、日常生活動作(ADL)の質が劇的に向上するため、「手術をした方が早い」と判断される一定数の患者様がいらっしゃるのが実情です。
ちなみに、完全に変形しきって股関節がほぼ動かなくなると、歩き方はおかしくなりますが、逆に痛みそのものは消失するというケースも過去に確認されています。
筋肉由来の痛みを見逃さないために(施術家の視点)

医師は骨を診ますが、我々施術家は「筋肉」を診ます。
股関節痛や外転制限を引き起こしている原因が、実は大腿筋膜張筋(太ももの外側にある筋肉)や内転筋(太ももの内側にある筋肉)の過度な緊張によるものであるケースは非常に多いのです。
関節を動かす際、片方の筋肉(内転筋など)が伸び、もう片方(大腿筋膜張筋など)が収縮しなければスムーズに動きませんが、ここが硬結していると「関節が浅くハマっている」ような痛みや引っかかりを感じます。
実際に、約30年前に人工関節を入れ、再び激しい股関節痛が出たため医師から「再手術」を勧められた患者様が、当院の手技や通電アプローチによって痛みが改善したケースもありました。
これは痛みの原因が人工関節そのもの(骨・器具)ではなく、周囲の筋肉性の要素だった証拠と考えられます。
今回の70歳女性のケースも、ブロック注射をやめて痛みが再発したということは、一時的に薬液で筋肉の滑りを良くしていただけで、根本的な筋緊張のバランスや骨盤周りの土台が改善されていなかったと考えられます。
大腿部の内側と外側(内転筋と大腿筋膜張筋)を挟むように通電して筋肉を緩めたり、基礎的な骨盤の連動性を整えることで、大きな改善が期待できるはずです。
まとめ

整形外科の治療方針を理解しつつ、我々施術家だからこそできる「筋肉と動作」へのアプローチで、患者様の生活の質を向上させていきましょう。
骨の変形や画像所見にとらわれず、筋肉や関節の動きという視点を加えることで、見えてくる改善の道筋があります。
今回の症例が、日々の臨床の参考になれば幸いです。
【柔道整復師・鍼灸師 坂爪 慶 監修】


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