
こんにちは。
さかつめ整骨院鍼灸院の坂爪 慶です。
現場の先生から寄せられた実際の相談をもとに、整形外科的な視点と保存療法のアプローチの違いについて深掘りしていくシリーズの第4回をお届けします。
症状のおさらい

今回の症例:82歳 女性
主訴:数年前から足裏の感覚が鈍く、「何か紙が挟まっているような感じ」が続いている。
足裏がふわふわして力が入らず、歩行時に転倒しそうになる不安感を訴えている。
身体所見:足の筋力は保たれており、腱反射も正常。
ご本人は「腰痛」を全く自覚していない。
経過:複数の医療機関に通院するも改善がみられず、ある病院で画像診断に基づき「腰椎の固定術(手術)」を勧められている状況。
このケースについて、同業の先生方からよくいただく論点に沿って紐解いていきます。
① 病院では一般的にどのような対応がなされるのか

このような「足裏の感覚異常」を訴える患者様が病院を受診した場合、どのような経過をたどることが多いのでしょうか。
今回のディスカッションから見えてきたリアルな背景を解説します。
まず、お薬の処方についてです。
一般的に、神経系のトラブルと聞くと「リリカ」「トラムセット」「タリージェ」といった神経障害性疼痛の治療薬が処方されるイメージがあるかもしれません。
しかし、今回のケースではこれらの薬は処方されていませんでした。
なぜなら、患者様の主訴が「強い痛み」ではなく「感覚の鈍さ(しびれ感や違和感)」だからです。
痛みを強く伴わない場合、こうした強い神経痛の薬は出されないことが多く、処方されたとしても血流改善薬やビタミン剤、あるいは骨粗鬆症の薬(ビタミンDなど)に留まることが一般的です。
次に、手術の提案についてです。
この患者様は、腰痛を全く自覚していないにもかかわらず、腰椎固定術を提案されています。
同意書には「手術に期待される効果は50%程度」「しびれが残存する可能性が高い」と記載されていました。
では、なぜ医師は改善の見込みが必ずしも高くないにもかかわらず、リスクを伴う固定術を勧めるのでしょうか。
それは、「これ以上、保存療法(投薬やリハビリ)で病院としてやれることがない」という医師側の事情が背景にあると考えられます。
患者様が「足がおかしい、どうにかしてほしい」と何度も訴えるため、医師としても最終手段として「結果は分からないが、原因となり得る腰椎にアプローチしてみるしかない」というスタンスで提案しているケースも少なくありません。
また今後腰痛の変性が進行すると症状の悪化が考えられるので、その点を予防するという可能性もあると考えます。
残念ながら、もし手術をして足裏の感覚が改善しなかった場合でも、病院側としては「医学的にやるべき処置(手術)は行いました。あとはこの症状と付き合っていきましょう」というところで診療が一段落するケースが多いのが実情です。
② 本当に手術が必要なのか 〜身体を診る立場からの見立て〜

では、この方に本当に手術が必要なのでしょうか。
足の筋力はしっかりと保たれており、排尿障害や排便障害といった「絶対的手術適応」となる重篤な症状もありません。
この状態で、リスクを負ってまで腰椎固定術を行うメリットは非常に少ないと考えられます。
我々施術家が着目すべきは、「神経の圧迫」以外の要因です。
病院の画像診断では、どうしても背骨(腰椎)での神経圧迫ばかりが注目されがちですが、足裏の感覚異常には「血流不全(むくみ等)」が大きく関与しているケースが多々あります。
実は、神経と血管は並走しています。
足がむくみ、血流が悪化することで、神経に十分な栄養や酸素が届かなくなり、結果として「紙が挟まっているような感覚」や「砂利を踏んでいるようなしびれ」を引き起こしている可能性が非常に高いと考えられます。
改善の可能性を見極めるポイント

もしこの症状が、長期間の神経圧迫によって神経自体が不可逆的に変性しているのであれば、足裏の感覚は「24時間、どんな時でも、どんな姿勢でも全く同じように欠如している」はずです。
しかし、問診や施術の中で以下のような変動が見られる場合は、改善の余地が大いにあると考えられます。
- 時間帯によって症状の強弱がある(朝と夕方で違う等)
- 動いている時と止まっている時で感覚が変わる
- 施術(手技や物理療法)の直後、一時的にでも足裏の感覚が良くなる
これらの変動があるということは、神経が完全に断絶しているわけではなく、血流が改善したタイミングで神経機能が回復している証拠と考えられます。
したがって、全身の循環改善や足のむくみを取るアプローチを継続することで、症状が軽減していく見込みは十分にあると言えます。
患者様へ寄り添うために大切なこと

最後に、こうした患者様に対して我々施術家ができる最も重要なことは、「不安を取り除くこと」です。
患者様は「このまま感覚がなくなって、歩けなくなってしまうのではないか」「転んで寝たきりになるのではないか」という強い恐怖を抱えて来院されます。
「症状に波があるということは、血流の問題が大きいですから、まだまだ改善の余地がありますよ」
「感覚が少し鈍くても、筋力はしっかりありますから、急に歩けなくなることはありません。大丈夫ですよ」
このように論理的に、かつ安心していただける言葉をかけていくことで、患者様の過度な不安や恐怖心は和らいでいきます。
不安が軽減するだけでも体の過緊張が解け、結果的に症状が良い方向へ向かうケースも多く確認されています。
まとめ

「足裏の感覚異常」に対して、病院では画像診断ベースで最終手段として手術が提案されることがありますが、それが必ずしも患者様にとって最善の選択とは限りません。
我々身体をケアする専門家は、画像には映らない「血流」や「日々の症状の変動」に目を向け、患者様の不安に寄り添いながら、保存療法で取り得る可能性を最大限に追求していくことが求められています。
同じような症例でお悩みの先生方は、ぜひ「血流不全の関与」と「安心していただける声かけ」を意識してみてください。
今回の症例が、日々の臨床の参考になれば幸いです。
【柔道整復師・鍼灸師 坂爪 慶 監修】


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